デジタル広告が主流となるなかで、物理的に手元に届く紙のダイレクトメール(DM)は、近年改めてその価値が見直されています。

一方で、DM業界には長年、人手を前提とした商慣習が色濃く残ってきました。業界全体として、DM発注の見積もりから注文完了までに1か月以上を要し、多くの時間と手間がかかる構造的な課題が存在していました。

こうした構造的な非効率に加え、物流業界の人手不足や2024年10月の郵便料金改定といった物流コスト増の影響も重なり、DM業界を取り巻く課題は、いま一層深刻化しています。
そのような状況下、ラクスルはこれらの課題に向き合い、DM発注フローのEC化・自動化を行いました。EC化により、約1か月かかっていた見積もりから注文完了までの期間を、最短1日へと大幅な短縮を実現。

本ニュースレターでは、業界課題の詳細や、従来当たり前とされてきたDM発注工程を整理したうえで、EC化によって何がどのように変わるのかを、「ラクスルDM便」の取り組みを通じてご紹介します。

 

デジタル広告へのシフトが加速するなかで見直される、「紙のDM」の価値

国内のDM市場は、2024年時点で2,863億円規模*¹。印刷資材をはじめとする制作費の高騰や2024年10月の郵便料金改定といったコスト増の影響を受け、市場全体は微減傾向にあります。しかし、デジタル広告の勢いが増して情報の埋没が加速するなかで、物理的に手元へ届く紙のDMは「デジタルでは代替できない、独自の価値を持つマーケティング手段」として、昨今改めて注目を集めています。

実際に、2024年に実施された日本ダイレクトメール協会の調査*²によると、メール広告の開封率は20.9%、バナー広告のクリック率は7.9%にとどまるのに対し、本人宛てに紙で届いたDMの開封率は74.3%、行動喚起率は20.8%と、非常に高い反応率を誇っています。

 

*1:
電通「2024年 日本の広告費」(2025年2月)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0227-010853.html

*2:
日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2024」(2025年3月)

 

■ 長年にわたって続いてきた、DM業界の構造的非効率

DMは主要なマーケティング手段として多くの企業に活用されている一方で、業界全体には依然としてアナログな商慣習が根強く、その非効率さが大きな課題となっていました。

具体的には、従来の発注フローは営業担当者の介在を前提としていました。標準価格が不透明な業界構造により、ユーザーが見積もりの提示を受けるまでに1週間を要するなど、発注前の段階で既に大きなタイムラグが発生していました。また、入稿後の確認作業も人力で行われるため、デザインデータの確認や郵便法への適合、膨大な宛名リストの精査といった工程にも多くの期間を費やすことが、業界の常識となっていました。

DM発送の基本フロー

さらに、不備が見つかるたびに発生するメールのやり取りは、発送日をより一層遅らせる要因となります。加えて、発送手段として普通郵便とそれ以外の多様な配送プランを組み合わせる際、コストとスケジュールの最適解を導き出す計算は極めて複雑です。これまでは営業担当者が個別にプランをはじき出しており、ユーザーが自ら「最適なプラン」を即時判断することが難しい状況でした。ここに追い打ちをかけたのが、2024年10月に行われた約3割もの郵便料金の値上げ*³です。注文から発送までにかかる「人的工数」と、増大した「物流コスト」の二重苦は、ユーザーにとって大きな打撃となっています。

このように、DM発注における多くの「待ち時間」と「手間」を強いる既存のプロセスは、長年にわたる業界課題でした。


2024年10月の郵便料金の値上げ内容*⁴

*3:日本郵便株式会社 プレスリリース「郵便料金の改定および新料額の普通切手の発行などについて」を参照
https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2024/00_honsha/0613_01.html

*4:ラクスルマガジン「郵便料金の値上げはいつから? 変更点と効果的な対策」より引用
https://raksul.com/magazine/column/dm-postal-rate-increace/

 

■ 当社が変革するDMサービス

印刷・集客支援のプラットフォームを運営する当社では、印刷から配送までワンストップで対応するDMサービス「ラクスル ダイレクトメール」を提供しています。顧客データや行動履歴をもとに異なる内容を個別最適で出し分けられる「パーソナライズDM」や、セイノーグループの地区宅便と提携した、1通45円(税抜)〜の業界最安級の配送プラン「ラクスルDM便」をはじめ、DM領域においてもサービス展開の幅を広げています。

 

そしてこの度、当社ではDM発送に対する業界課題を解決すべく、コストを抑えたDMを手軽でスピーディーに配送できる新仕様を開発し提供開始する運びとなりました。具体的には、「ラクスルDM便」における注文フローの刷新・EC化です。当社が有する知見とテクノロジーの力を駆使して、DM発注に必要な「見積もり・デザイン制作・各種データチェック」という煩雑な個別対応プロセスを自動化し、オンラインで完結するシステムの構築をおこないました。結果として、これまで約1か月かかっていた見積もりから注文完了までのリードタイムは、最短1日へと劇的な短縮に成功。DM発注にかかる「人的工数」と増大した「物流コスト」というユーザーの二重苦を取り除く画期的な取り組みを、以下にて詳しくご紹介します。

 

<業界最安級の配送を支える「ラクスルDM便」とは?>
「ラクスルDM便」は、一都三県および関西エリアを含む全国へDMを発送するお客さまに向けて、印刷から配送までをワンストップで、 1通45円(税抜)〜の業界最安級にて提供するサービスです。ラクスルの低価格・短納期の印刷と、セイノーグループ・地区宅便の配送網を組み合わせ、DM発注業務の工数削減と従来価格より10%のコストダウンを両立した業界最安級のDM配送プランとして、昨年3月より展開しています。なお、一都三県と関西エリア以外のエリアは、日本郵便株式会社の提供する「ゆうメール」を活用し、全国配送に対応しています。

 

<「ラクスルDM便」のEC化で変革した業界課題とは?>
前章で述べたように、DM業界では長年、人手を前提とした非効率なプロセスが課題となってきました。「ラクスルDM便」も、配送コストの最適化という点で価値を提供してきた一方、DM発注の全体プロセスのなかには、見積もりのやり取りや各種データ確認など人の介在を必要とする部分が残っていました。

今回、当社はこうしたプロセスそのものを見直し、「ラクスルDM便」をECサイトで見積もりから発送まで完結するサービスへと刷新。ECサイト上で「通数」「商品内容」「配送プラン」などを選択するだけで金額が確定し、これまでメールで行っていた見積もりのやり取りを不要にしています。あわせて、印刷デザインデータや宛名リスト等のチェック工程を自動化することで、確認にかかる待ち時間を大幅に削減できる設計へと進化させています。

その結果、見積もりから注文完了までにかかる期間は、従来の約1か月から最短でわずか1日へと短縮。人的工数と物流コストの双方を圧縮し、DMをより手軽かつスピーディーに利用できる環境を実現しました。

 

「ラクスルDM便」注文完了までのフローの変化

 

プレスリリースURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000522.000010550.html

 

■ ラクスルならではの技術・開発力

納期の劇的短縮を可能にしたEC化の実現の背景には、当社ならではの技術・開発力があります。その一例として、ここでは「宛名リスト自動チェック」について取り上げます。

〈宛名リスト自動チェック〉
宛名リストの不備確認(宛名・住所重複、郵便番号欠損等)を自動化・修正提案する機能です。従来のDM発注では、お客さまが送付先の宛名リストをExcel等で作成し、それを一つひとつ目視で確認することが業界の常識でした。宛名リストの会社名や住所の重複、郵便番号の欠損といったチェックに加え、Excel上の入力ズレによる個人情報の取り扱いミスを防ぐための慎重な確認が求められることから、お客さまにとって負荷が高い作業でした。

そこで、当社ではシステム上で宛名リストを自動でチェックできる機能を開発しました。お客さまに対して自動で素早く修正内容を提案できるようになったことで、従来1.5営業日を要していた人手を介した作業は、わずか1時間へと大幅に短縮お客さまの作業負荷と待ち時間削減を同時に解決することができました。


■ “半自動化”をキーワードにした、これまでの取り組み

また、この度の「ラクスルDM便」のEC化の実現以前にも、当社では印刷EC「ラクスル」のサービスにおいて、“半自動化”をキーワードにさまざまな制作・発注フローをテクノロジーの力で効率化してきました。その代表的な例として、「スピードデータチェック」や「最適発注」の取り組みが挙げられます。

<スピードデータチェック>
印刷データのチェック工程を自動化する仕組みです。従来、専門スタッフの手作業で半日〜1日かかっていたところ、自動化により最短約20秒で完了できるようになりました。これにより、入稿後のお客さまの待ち時間と確認のやり取りの大幅削減に成功しました。

<最適発注>
複数の印刷物の「付け合わせ(ギャンギング)」と、印刷工場の振り分けを自動化する技術です。従来、人手を前提としていたこの工程は、組み合わせの総数が膨大なため非効率な状態が続いていました。自動化により、丸一日かかっていた作業を約10分に短縮でき、受注キャパシティの向上を実現しました。

このような技術基盤や知見を活かして、印刷周辺領域であるDMにおいても、見積もりやデータ確認といった人手前提のプロセスをEC上で再設計することを可能にしたのです。

当社は今後も、リアルな産業の現場にテクノロジーを掛け合わせることで、業界に残る非効率を一つひとつ解消していきます。そうして、「End-to-Endで中小企業の経営課題を解決するテクノロジープラットフォーム」への進化に向けて、お客さまの課題解決に寄与する事業・サービスの価値創出に努めてまいります。

 

■事業責任者コメント:
ラクスル株式会社 ラクスル事業本部 集客支援事業部 部長 田坂 一樹

DM業界は今、物流2024年問題をきっかけとする、歴史的な値上げに直面しております。そこで、ラクスルはセイノーグループと連携して、地域内で完結する“地産地消型の物流網”を構築し、昨年3月、1通45円(税抜)〜の業界最安級のDMサービス「ラクスルDM便」をリリースしました。

今回はさらに、見積もりから注文完了までに約1か月を要していたアナログな商慣習をテクノロジーで打破し、リードタイムを「最短1日」へ大幅に短縮しました。コストと工数の二重苦を解消し、DMを誰もが手軽に使える販促手段へとアップデートします。

今後はECサイトで発注可能な商品拡充や、エリア展開を進め、全国どこでも、あらゆるニーズに即座に応えるDMサービスを目指していきます。

ラクスル

印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」
全国の提携印刷会社の保有する印刷機の非稼働時間で印刷することにより、高品質な印刷物を低単価で提供する仕組みを開発。集客活動を支援する新聞折込・ポスティングなどの広告サービスも提供しています。